高齢ドライバーへ運転免許証自主返納の推進と同時に安全運転寿命を延ばす必要性

高齢者ドライバーによる事故が相次ぎ社会問題になっています。日本では高齢者の危険運転や事故リスクを懸念し、高齢者には運転に不安が生じた段階で運転免許証の返納を推奨しています。各都道府県や自治体では、自主返納者に自主返納特典として生活に関わるサービスを提供していますが、未だ高い返納率と言えないのが現状です。

高齢者の運転免許保持数や事故数から読み解く

警視庁運転免許統計によると、運転免許保有者数は令和元年の年末時点で約8,216万人。その中で65歳以上の高齢者ドライバーの割合は、22.9%の約1,885万人と全体の5分の1以上を占めており非常に多い割合です。

また、総務省統計局の人口統計による令和元年12月1日時点での65歳以上の人口は約3,592万人であることから、65歳以上の高齢者のうち半数以上が運転免許を保有していることが分かります。

高齢者による事故の割合と原因となる違反内容は

令和元年における交通事故発生件数は、警視庁の発表で3万467件です。その18.1%にあたる5,524件が、65歳以上の高齢者が第一当事者の交通事故です。これは、およそ6件の事故中1件が高齢者による交通事故と考えられます。

高齢者の交通事故は、発見の遅れや脇見運転による右折時の歩行者巻き込みなどの『安全不確認』が多いと言われおり、全体の39.1%を占めています。

日本の運転免許証返納の割合は

相次ぐ高齢者による事故の報道もあり、免許の自主返納を考える人も増えてきました。1998年に始まった運転免許の自主返納制度は、サービスの充実や普及活動を続け、令和元年で約60万人、令和2年には約55万人の自主返納者数を達成しています。

最も返納率が高いのは東京都、次点で神奈川、大阪、静岡、埼玉と続きます。東京の返納率が高いのは、車の保有台数が全体の5%と少ない事や利便性の高い居住環境で日常的な運転の必要性が他県に比べて少ないという理由が考えられるでしょう。

都内近郊などは車を運転しなくても、自主返納によるサービスを受けた方が生活が便利だということです。

逆に地方では車がないと移動できない地域があり、公共交通機関の選択肢も少ないことから高齢者の自由が制限されてしまう可能性が危惧されており、それが自主返納率が低い要因になっているのかもしれません。

2022年に変更される高齢者講習と認知症の発見につながる認知機能検査

日本では現在、安全な運転を続けるために満70歳以上を対象に運転免許証の更新時に高齢者講習を行っています。高齢者講習の内容は座学に加えてコースを運転する『実車指導』などです。

2022年からは、75歳以上で信号無視などを含む違反歴があるドライバーに対して『実車指導』ではなく『実車試験』が義務づけられ、主に死亡事故の原因である左右確認や車線変更、アクセルとブレーキの踏み分けなどがチェックされます。指導ではなく試験なので、信号無視や逆走があった際には不合格、そのまま期限がきたら免許失効になります。ただし、免許有効期限満了日の6か月前から満了日までの間で何度でも再受験は可能です。

さらに満75歳以上の高齢者は、高齢者講習の前に認知機能検査と呼ばれる記憶力や判断力を測定する検査を受けなければなりません。認知機能検査は100点満点の検査で、点数によって以下の表にある3つの区分に分類されます。

【第3分類】100点から76点までは第3分類で認知機能や判断力に問題なしとされ、高齢者講習の受講へ進みます。

【第2分類】75点から49点までは認知機能及び判断力に若干の低下が見られるとされ、第2分類として1分類より1時間多い3時間の講習と受講の金額も高くなります。

【第1分類】48点から0点では認知機能と判断力が低いと見なされ、医療機関の受診と診断書の提出が必要です。

この検査は認知症診断が目的ではありませんが、毎年第一分類になり受診した結果、数%の人が認知症と診断されています。この場合は返納ではなく免許証の停止、取り消し扱いです。

この認知検査に対しては「安全対策として意味が無い」という声もあります。しかし認知症か否かは家族が気が付いても中々本人に医療機関への受診を勧められない、本人が受け入れないという声もあるため、自身の判断力や認知力を認識するためにも免許証更新のタイミングなど定期的な機会は必要です。

高齢者の家族ができることでは、いきなり受診や免許の返納を勧めるのではなく、なるべく早い段階でドライブレコーダーなどを導入して機能に慣れてもらうことなどがあります。ドライブレコーダーは、前方衝突アラート機能や車線はみ出しの警告などの安全運転支援機能が搭載されているため、安全運転はもちろんの事どこでどういった警告を受けることが多いのかをドライバーが客観視でき、高齢者の運転に不安がある家族が免許証の返納を勧める説得材料にもなります。

自治体や警察、医療の分野から高齢ドライバーへのアプローチ

高齢者が家族と同居しているほか、近距離に住んでいる場合はドライブレコーダーの取り付けや説明を受けることが可能ですが、近年は家族と離れて暮らしている場合も増えています。

そうなると、高齢者は自分で運転をしなくては生活ができないにも関わらず、運転に対して指摘される機会も少ないでしょう。

このような例は今後も増えていくことから、すでに高齢者に対してドライブレコーダーを使用した取り組みを開始している自治体もあります。高齢者ドライバーに対してドライブレコーダーを貸し出し、その映像を見ながら警察官が指導するという取り組み内容です。

さらに自治体や警察だけでなく、医療機関でも高齢ドライバーを対象とした取り組みが行われています。

大分県の病院では2017年に「高齢者自動車運転外来」を開設し、認知症ではないものの運転に少しでも不安のある高齢者に認知機能検査などを実施するとともに、ドライブレコーダーの貸し出しを行っています。そして、その映像を作業療法士が分析して本人と注意点や安全な走行ルートに関する指導を行う対策をしています。

自主返納の推奨と、自治体に求められるもの

運転免許証の自主返納促進には、公共交通機関の充実や、高齢者が無理に運転を続けなくても良い社会基盤の整備が必須と言えるでしょう。それらの充実がない場合、いつかは運転できない時がくるからと、地域から徐々に人が離れてしまう可能性が大いにあります。

高齢者ドライバーの問題に悩み、運転免許の自主返納を増やしたい自治体は、これからも増加する高齢者のためにも早期に民間企業などと提携し、高齢者へ移動の自由を担保していかなくてはいけません。

とはいえインフラ整備はすぐにできるものではないため、家族のケアや現在の公共交通機関、民間サービスなどを個人で活用してもらいつつ、カバーできない部分では車の運転も続けてもらう必要があります。

今すぐにできることで、高齢者支援やインフラ整備と同時に高齢者による交通事故を減らすためには、ドライバーの安全運転寿命を延ばすほかないでしょう。

人類100年時代で健康寿命に注目する現代、安全に配慮した運転寿命も延ばす試みを

深刻な社会問題になりつつある高齢者による交通事故、日本では人類100年時代に突入し高齢者と呼ばれる年代は今後も増加の一途をたどります。

同時に高齢者ドライバーも増えていく見込みであるため、早急な対策が国や自治体に求められるでしょう。

自治体主導でできることとしては、早期からドライブレコーダーや安全装置などに関する講習を開催して運転技術の変化を理解するように促し、安全意識を高めていくことなどが挙がります。

また、万が一の時に助かる命を増やすため、事故を検知して通報ができるシステムなどドライバーと歩行者の双方に安全な車社会の構築も必要です。

単純に高齢者ドライバーを減らすのではなく、歩行者の安全を守りながら高齢者ドライバーの安全運転寿命を延ばすことが現在、現実的かつ事故の減少実現への道なのではないでしょうか。

また、運転免許証の自主返納者は増加していく見込みであることから、多くの人が車を手放すと予測できます。そのため、すでに持続可能な社会の実現に向けた中古車の扱いにも目を向けるときなのかもしれません。

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くるまないと(ドライブレコーダー)