地方自治体が抱える高齢化問題と今後の労働力不足への備え方

人口の減少、少子高齢化が進んでいる日本において、労働力人口の低下も大きな問題となっています。対策として、人生100年時代と高齢者の雇用拡大が行われていますが、もう一方で一人暮らし高齢者の増加、自宅で過ごす高齢者サポートの自治体への負担も、対策が求められる課題です。

地方自治体の高齢者の割合


高齢化の主な要因は、年齢調整死亡率の低下による65歳以上人口の増加と、少子化の進行による若年人口の減少といわれています。

日本全体の高齢化率

日本の総人口は、令和2(2020)年10月1日現在、1億2,571万人です。65歳以上人口は3,619万人で、65歳以上を高齢者とした場合、総人口における高齢者率は28.8%になります。

さらに65歳から74歳人口は1,747万人で、総人口に占める割合は13.9%、75歳以上人口は1,872万人で、総人口に占める割合は14.9%です。また、令和47(2065)年には、約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上になるといわれています。

高齢者率第1位は秋田県

都道府県別、令和元(2019)年の高齢者率第1位は、秋田県の37.2%です。続いて、高知県の35.2%、山口県と島根県の34.3%になります。今後、高齢化率は上昇すると見込まれており、1位の秋田県は令和27(2045)年には高齢化率50.1%、実に県民の半数以上が65歳以上になる見込みです。

人口の3分の1を高齢者が占めているということ、2045年には約半数が高齢者になることから、労働力不足や高齢者支援の逼迫が見込まれます。

最も高齢化率が低いのは沖縄県

都道府県別、令和元(2019)年の高齢者率が最も低いのは、沖縄県の22.2%です。続いて東京都の23.1%、愛知県の25.1%となっています。

しかし、沖縄県は令和27(2045)年には高齢化率31.4%、東京都は30.7%、愛知県は33.1%と、いずれも30%を超える見込みです。

都道府県別、一人暮らし高齢者(独居老人)の割合

千葉県が発表した平成27(2015)年国勢調査をもとに、都道府県別の一人暮らし(独居)高齢者の割合を確認していきましょう。同居している高齢者よりも一人暮らしの方が多くのサポートが必要になります。

第1位は東京都

65歳以上人口のうち、一人暮らし所帯の割合が全国で最も高いのは、東京都の24.6%です。人口に占める高齢者率は全国で2番目に低い東京都が、一人暮らしの割合では1位になっています。ただ、東京は首都であることから人口が多く、労働力不足対策は地方自治体に比べて緊急度は低いでしょう。

最も低いのは山形県

65歳以上人口のうち、一人暮らし所帯の割合が全国で最も低いのは山形県の10.7%となっています。続いて、新潟県の12%、福井県の12.2%です。こちらの順位も、平成22(2010)年の結果と変わっていませんが、いずれの割合も増加しています。

一人暮らし高齢者の自宅における死亡者数

一人暮らし高齢者の割合が全国1位の東京都(23区内)における死亡者数のデータを、東京都監察医務院が公表しています。それによると、孤独死と見られる事例が多数発生しており、平成15(2003)年から平成28(2016)年の数は多少前年より下がる年もあるものの、全体的には増加し続けています。平成15(2003)年には1,451人、平成28(2016)年の死亡者数は3,179人です。

東京都はサポート体制は整っているものの、地域によっては近所付き合いが少なく、一人暮らしの高齢者が孤立しやすい可能性があります。このような状況では、人と人との繫がりを大事にしつつも頼りすぎず、安否確認の見回り強化や見守りロボットの配布などで孤独死などを防いでいく必要があるでしょう。

労働人口の年齢別割合と就業状況

全国的に高齢化が進む中、労働力人口低下の問題が発生しています。

労働力人口とは、15歳以上の就業者と完全失業者の合計です。就業者は主に仕事をしている、または家事や通学のかたわら仕事をしている者、および仕事の待機中である休業者を指します。完全失業者は、仕事があれば即就業できる、あるいは事業の準備中である者です。

労働力人口における高齢化

令和2(2020)年の労働力人口は6,868万人となっており、前年に比べ18万人減少しています。これは8年ぶりの減少です。

また、労働力人口における年齢別割合を見ると、15歳から29歳の割合は平成2(1990)年には全体の23.1%を占めていましたが、平成29(2017)年には17.7%と、ゆるやかに減少しています。さらに、令和12(2030)年には16.5%になる見込みです。

若年層とは反対に、高齢者の割合は増加しています。60歳から64歳が占める割合は、平成2(1990)年には5.8%でしたが、平成29(2017)年には7.5%と増加しており、令和12(2030)年には9.5%にまで増加する予想です。

また65歳以上が占める割合は平成2(1990)年には5.6%でしたが、平成29(2017)年には10.4%と増加しており、令和12(2030)年には11.1%と見込まれます。

労働人口の減少が自治体へ与える影響としては、高齢者支援の要となる介護従事者の減少による高齢者支援の破綻などがあります。労働者ありきの支援を続けていると、労働者が減ったときには持続不可能に陥る可能性があるのです。

介護職の人手不足

労働力人口の低下や高齢化により、介護職における人手不足も深刻になっています。介護職は人とのかかわりにやりがいを感じる反面、人間関係の悩みも多く離職するケースも少なくありません。

また体力的にきついと感じる仕事でもあり、雇用側も人材の確保が難しくなっています。介護業界においても人手不足対策として、AIやIoTを導入する必要があるのかもしれません。

各自治体が行っている高齢者へのサポート例

各自治体は、それぞれ高齢者のサポートを実施しています。ここでは、2件の例を紹介します。

鳥取県南部町「高齢者の共同住宅と支援サービスの提供」

鳥取県西部に位置する南部町では、独居高齢者等の増加、介護サービスを利用する地域のつながりの希薄化、高齢者の年金受給額が低いという問題を抱えていました。町内には特養と介護療養型医療施設しかなく、軽度あるいは低所得者向けの住まいが不足していたため、既存の民家・公的施設等を改修。利用者負担を安価に抑えられるような高齢者の共同住宅を作り、地域住民による見守り・食事の提供など、生活支援サービスを行えるようにしました。
また医療・介護サービスは、必要なときに外部から提供できるような仕組み作りを実施しています。

東京都世田谷区「地域包括ケアシステムの構築」

東京23区西部に位置し、人口規模は23区で最大の世田谷区では、一人暮らし高齢者・高齢者だけの所帯が全体の半数を超えています。そのため「医療」「介護」「予防」「住まい」「生活支援」の5つの要素をバランスよく含んだ世田谷らしい「地域包括ケアシステム」の構築を実施しています。

具体的な取り組みは、在宅医療の充実、高齢者の在宅生活を守るために定期巡回体制を整える、高齢者の居場所を創出、低所得高齢者の住まいの確保、ふれあいサービスの提供などです。住み慣れた地域で、いつまでも安心して暮らし続けられる地域社会の実現を基本理念としています。

高齢者の増加と労働人口の減少で高齢者支援が破綻しないためには


働く意欲がある健やかな高齢者が積極的に社会に参加していくことは、労働力人口低下の問題解消のためにも重要といえます。また、自宅で過ごす高齢者への地域を挙げてのサポートも、大切な取り組みといえるでしょう。

しかし、先に挙げた自治体の支援例はいずれも地域との繫がりを必要とする支援です。今後、高齢化が進み支援を受ける人が増えた場合、労働人口が減った場合にも持続ができるかは予測できません。

今後、どの地域でも労働人口の減少により人手不足になることが予想されます。人力で地域のつながりや協力に依存すると、持続が難しくなる未来も考えられるため、IoT技術を活用し人力の範囲を減らしていく必要がでてくるでしょう。

例えば、高齢者が持ち運びやすいGPS、突然の事故を感知して家族にお知らせをするドライブレコーダー、通報できるサービス、予定を教えてくれて会話から精神状態の把握もできる見守りロボットなどの活用は、介護する家族や自治体の負担を軽減することにつながる手段です。

高齢化社会でも持続可能な支援の実現に向けて、まずは支援方法の見直しが必要なのかもしれません。

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