認知症患者による「徘徊(ひとり歩き)」に対して今後、各自治体が取るべき持続可能な対応は

認知症が引き起こす「徘徊(ひとり歩き)」問題は無視できない段階に

※近年では※1『徘徊』ではなく『ひとり歩き』などの言い換えが行われていますが、独自の言い換えも多いことから、本記事では『徘徊』という言葉を交えています。

日本では高齢者の増加に伴って認知症有病者数が増加傾向にあり、今後も増加の一途をたどる見込みです。厚生労働省によれば、2012年には65歳以上の高齢者の15%にあたる462万人が認知症であると報告されていますが、2025年には19%にあたる675万人が認知症になると言われています。(各年齢の認知症有病率が一定の場合)

認知症は色々な要因で脳に障害が発生することで、日常生活に支障をきたす記憶障害などの中核症状が現れます。その中核症状が高齢者の性格や環境に影響して「徘徊」と呼ばれる周辺症状を引き起こします。

徘徊は、外出時に目的自体を忘れてしまい帰り道もわからなくなっている状況です。夜間に外出することもあるため、怪我や事故に遭うリスクが高く危険視されています。

警察庁生活安全局生活安全企画課によると、平成28年に認知症又は認知症の疑いによって行方不明になった人は15,432人ですが、毎年増加しており、令和元年には17,567人に、行方不明者全体の約20%を占めています。認知症有病者数の増加に伴って行方不明者数はこれからも増加することが予想されます。

現在でも介護者の介護疲れが叫ばれますが、高齢者の増加に伴って高齢の一人暮らし、老老介護も増えることが予想されており、個人の介護者や近所付き合いだけでは徘徊(ひとり歩き)への対応に限界があることは明白でしょう。

認知症の問題はもはや家族や近所だけで解決できる問題ではなく、行政も無視できない段階に入っています。日本政府は平成27年1月に日本政府が新オレンジプラン(認知症施策推進総合戦略)を策定したのをはじめ、各自治体でも認知症施策が進み、行政や地域住民が一体となって認知症の「徘徊(ひとり歩き)」問題と向き合い始めています。

各自治体の徘徊(ひとり歩き)に対するサポート

認知症の高齢者の徘徊(ひとり歩き)に対して、早期発見・早期保護ができるように各自治体で様々なサポートが行われており、高齢者を無事に保護する他、家族の負担軽減につながっています。

SOSネットワーク

SOSネットワークは地域にある民間企業や福祉・介護施設などから構成されています。徘徊(ひとり歩き)によって行方不明になっている認知症有病者の捜索を家族から要望された場合、市町村からネットワーク構成機関に連絡がいき、ネットワーク構成機関は業務内の中で徘徊者の捜索に協力することで、行方不明者の早期発見、保護につなげます。例えば、京都府の場合は全市町村においてSOSネットワークの構築が進んでおり、警察や消防、金融、バスやタクシー等の交通事業、スーパー等の小売業をはじめ幅広い構成機関でネットワークが構築され、行方不明者の捜索態勢が整っています。

事前登録制度

事前登録制度は認知症を発症している場合など、徘徊(ひとり歩き)して行方不明になる恐れのある人が、もしもの時のために本人や家族の同意の上で氏名や顔写真などを登録しておく制度です。氏名や顔写真を登録しておくことで、警察をはじめとした行方不明者の捜索活動をする人達の間で情報共有が容易にでき、素早く捜索活動に取り掛かることで行方不明者を一刻も早く保護できることが期待されます。事前登録制度も姫路市などをはじめ、多くの自治体で導入されている制度です。

見守りツールや捜索ツールの利用支援

徘徊(ひとり歩き)する認知症の高齢者は、思いのほか遠方まで出かけてしまうケースも多く、その場合は地域の協力だけでは対応が難しく、発見までに時間がかかります。

そのため最近では、使用するツールは市町村によって異なりますが、高齢者支援として、見守りや捜索用にQRコードシールや名札を配布したり、GPSを貸し出したりしている地域が増えてきています。

QRコードが印字されたシールや名札は、スマートフォンでQRコードを読み込むことで行政機関など連絡先が表示され、身元の特定につながります。QRコードが入ったシールや名札を身に着けた人を発見した人は誰でも対応可能なので、行方不明者の早期保護に効果的です。
難点としては、QRコードシールや名札の場合、発見者が徘徊者へ声かけをしなくてはならず一般の人にはハードルがやや高いと言えます。またQRコードや名札の存在の認知もまだ多くないことや徘徊なのか徘徊への予防なのかの判断が付きにくいことも課題でしょう。

この難点は、GPS端末に搭載される現在地表示機能や移動履歴表示機能などでカバーできますが、高齢者支援にGPSを取り入れている自治体はまだ少ないのが現状です。

すでに徘徊(ひとり歩き)による行方不明者の早期発見にGPSを活用している自治体は

認知症の症状よる徘徊(ひとり歩き)は日中ならば近所付き合いや地域のネットワークでも見守れますが、夜間は地域の目が少なく見通しも悪いことで高齢者全体での事故件数が多い傾向にあります。

このような人海戦術の限界や、夜間の問題点などを解決すべくIoT技術を活用する自治体も出てきており、今後も増える見込みです。
これらの自治体では行方不明になる恐れのある人の位置情報を探索し、早急な保護ができるようにGPSを導入しています。

ただしGPS端末は高齢者にGPS端末を携帯してもらう工夫が求められます。認知症を発症している場合、新しい習慣が身につきにくい傾向にあるため、出かけるときはGPSを首にかけて欲しいと伝えても難しいことが多いです。

そのため、身に着けやすい軽量の小型サイズでかばんや靴、ベルトなど高齢者が普段よく身に着けるものに自然に帯同させる工夫が必要であり、万が一の時に充電切れにならないようバッテリー持続時間や充電時間にも配慮が必要です。

高崎市のケース

高崎市は平成27年から「はいかい高齢者救援システム」というGPS無料貸し出しサービスを提供しています。高崎市に在住している65歳以上の認知症患者のうち、危険が伴う一人歩きが見られる人を介護する家族などが対象です。GPS端末を身に着けた高齢者が行方不明になった場合は、時間や曜日を問わず対象の行方不明者の位置情報を家族などに送信し、捜索の一助となってくれます。

相模原市のケース

相模原市では相模原市在住の在宅生活者で、介護保険の要介護、要支援認定を受け、GPS端末サービスが必要と判断される認知症の高齢者などを対象としてGPSを貸し出してくれます。基本的な端末レンタル料金は月1,155円で、対象の高齢者の経済状況によって減額などの特例もあります。相模原市ではGPS端末サービスの貸し出しだけでなく、個人賠償責任危険補償特約を付帯しており、事故で対象の高齢者が死亡する他、障害や後遺症をもたらした場合、また、他人に害を及ぼして賠償責任を負うことになった場合に保険金が支払われるので、もしも何かあった時には心強いでしょう。

人との繫がりはそのままに、持続可能な高齢者支援を


日本で毎年17,500人が行方不明、そのうち28%が発見に2日以上かかっていることは看過できない現状です。生存率は2日で63.8%、3日・4日で21.4%と落ち込みます。川の付近などの危険が伴うエリアへ進入している場合はさらに早急な救助が必要でしょう。

徘徊(ひとり歩き)への対策は家族や近所の努力だけでは限界があり、行政も一体となった取り組みが求められます。

現在でも徘徊する認知症高齢者の早期発見、保護のために自治体も色々なサポートを考案していますが、繫がり強化や声かけに加えてGPS端末など高機能で便利な最新技術を取り入れることによって、より万全に高齢者の見守り体制を構築できるはずです。

GPSがあれば高齢者が出かけた後、家族が位置情報を確認して帰りのルートが正しいか迷っているのかを判断できるため、必要な時にのみ手を貸すなど個人の進行度合いに合わせた適切な対応が可能です。

認知症患者は一人での外出を止めると不安を感じ、安心できる場所を求めるようになります。また、行き帰りが行える日もあり外出は精神安定に必要な場合も考えられます。これは奪ってはいけない権利です。

認知症を患う人の自由や地域との繫がりを絶つことなく、普段の暮らしを続けながら『もしも』の時には命を守れる対策こそが持続可能な支援に繫がるのではないでしょうか。

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