夏の体育や休み時間、部活動の熱中症対策は生徒と教師に任せない取り組みを

熱中症の危険性や対策方法は多くのメディアで扱われ周知されているにも関わらず、毎年多くの人が熱中症で救急搬送され、子どもの死亡事故も絶えません。

平成30年の6月から9月を対象にした統計を見ると、熱中症で救急搬送された人数は95,137人で死亡者の数は159人でした。救急搬送された人数のうち7歳以上18歳以下は13,192人です。

また、子どもの熱中症は年齢が低いほど起こりやすいと思われがちですが、実際には部活動が本格的に始まる中学生以降に多く起こっていて、環境省と文部科学省が2021年5月に発表した「学校における熱中症対策ガイドラインの手引き」によると、小学校から高校までの学校管理下での熱中症発生件数は平成30年で7,000件という結果もあります。その中で運動部の部活中の発症率は83.5%と非常に高い傾向です。

学校生活における熱中症対策のガイドラインの認識と熱中症事故例

学校における熱中症ガイドラインの内容は

2021年の熱中症対策ガイドラインの手引き内にある予防措置には、「教職員への啓発」「児童生徒等への指導」(児童生徒が自ら危険を予測し安全確保の行動がとれるように行動する)と記されています。

しかし、部活動の顧問は教職員であることが多く教職員には「予見義務」というトラブルを予測して回避する義務があります。そのため児童生徒ではなく、教職員側に熱中症の危険予測義務があると考えられるでしょう。

指導者の部活動立ち会いは『常時』である必要がないため、離席する場合は起こりうるトラブルを予想し、その対処をしておかなくてはいけません。行動指針にあるようにその日の暑さ指数を確認し、練習メニューを軽くしたり休憩時間を細かく指示したりする必要があります。

実際に起こった部活動での熱中症例と責任の所在

大阪の学校では、部活動中に教員が立ち会わずに練習メニューだけを指示し、熱中症が発生したケースがあります。その熱中症事故では部員に重度の障害がのこり、寝たきりになってしまいました。

このケースでは、教員は立ち会いをしないにも関わらず、練習メニューを通常と同じかそれ以上に厳しい内容で指示していたため、教員が「予見義務」を怠った責任と判断されています。

このような実際の判決例はあれど、ガイドラインでは生徒に対しても自己判断を求めています。それは体調が悪いことを隠さないように指導することを示していると考えられますが、児童生徒の自主性に任せると捉える人もいるでしょう。

熱中症の症状(軽度〜重度)と後遺症、難しい判断基準

子どもが熱中症になった際には、素早く適切な対応をすることが求められます。そのためには、熱中症になったときの症状や適切な対応を把握しておくことが重要です。

熱中症の症状

日本救急医学会の「熱中症および低体温症に関する委員会」では、熱中症の症状を、「軽症」「中等症」「重症」の3つのレベルに分けることを推奨しています。

中等症以上では後遺症をもたらすリスクが上がります。熱中症の後遺症はあまり知られていませんが、対象の年齢などは関係なく高次機能障害や腎機能障害、パーキンソン障害などを引き起こし生涯に亘って苦しむ可能性や、重度の障害が残り寝たきりとなるケースもあります。

軽症(Ⅰ度)

軽症の場合は、その場での応急処置が可能です。
回復まで目を離さず、様子がおかしいと感じたらすぐに受診するか救急車を呼びます。

  • めまいやたちくらみ
  • 失神
  • 筋肉痛や筋肉が固くなっている(こむら返り)
  • 大量に汗をかいている

中等症(Ⅱ度)

中等症の場合は、病院へ運んでください。(救急車を呼びます)

  • 頭痛や吐き気がある
  • ぐったりしている・身体に力が入らない
  • 呼吸が速いが脈はゆっくりしている

重症(Ⅲ期)

重症の場合は、病院への運搬後、入院や集中治療などの措置が必要です。(救急車を呼びます)

  • 体温が高い(40度以上ある)
  • 意識がない
  • 呼びかけに対する反応がおかしい
  • けいれん
  • 汗をかいていない
  • 歩くことができない

このように症状によって取るべき行動が変わります。しかし、児童や生徒によって症状や訴え方が変わるため、医療従事者でない教職員にとっては軽症か中等症かの判断をするのは難しいでしょう。

子どもは「大丈夫か」という問いに対して「大丈夫」と答えてしまうことが多くあり、また体調の悪化で詳しく体調を訴えることもできません。教職員は目に見える状態で判断せざるを得ないため、知識と経験、ガイドラインを頼りに行動することになります。

軽症でも甘く見てはいけない

熱中症が軽症に見えた場合でも、その判断は素人目に難しい事から目を離してはいけません。身体を冷やして水分補給をさせ、熱を測るなどして様子を見ます。子どもの場合は必ず大人が近くについている必要があります。

熱中症は帰宅後から翌日に症状が出る場合があり、それにより死亡したケースもあります。そのため必ず保護者へ受診を勧め、念のために迎えに来てもらう方が安心です。

子どもに必要な熱中症対策と指導方法

子どもの熱中症対策は強制力のある指示が重要です。どちらでも良いと捉えられる指示やタイミングを生徒に任せた場合、集中状態の児童生徒は指示を忘れてしまう可能性もあります。可能な限り、その都度直接指導して気付かせる方が良いでしょう。

時間を決めて水分補給を直接促す

脱水は熱中症の原因となるため、頻繁な水分補給は熱中症対策に有効です。

また、実際は喉が渇く前に水分補給の必要がありますが、喉の渇きを訴えたときには、いつでも水分を補給させることが大切です。その際は、一度にたくさん飲むのではなく、少しずつこまめに飲むのが望ましいと考えられています。

こまめな水分補給とは、喉の渇きを訴えていない場合には約20分おきに少しずつ水分補給をすることを指します。これに喉が渇いたタイミングでの水分補給を加えましょう。

体育の授業や部活時はマスクをしないように指導

マスクは顔半分を覆うため、熱がこもりやすくなっています。また、マスク内は湿気が高くなるので、喉が渇きにくくなっています。そのため、脱水状態になっていることに気がつきにくく、熱中症にかかりやすくなります。

令和2年には、スポーツ庁が「体育の授業にマスクの着用は必要ありません」との通達を行っています。

必要ないと言われていてもマスク着用が日常的になっている場合、児童や生徒はマスクを着用してしまう事もあるため、体育の授業や運動部の部活時は『熱中症対策としてマスクを外すように』と具体的な指導が必要です。

具体的な指示と児童生徒の立場への配慮

児童や生徒への指示は「適時」「喉が渇く前に」などと曖昧にすると、生徒間の上下関係や同調圧力により休憩が疎かになる可能性があります。

また、チームプレーの場合体調が悪くてもチームメイトに迷惑がかかると無理をしがちです。教員の役割として、率先して具体的な指示を出すことが求められています。

教員が部活動へ立ち会えずに上級生に指示を出しその時間の管理を任せる場合も同様です。

教員や上級生は子どもにとって逆らえない存在でもあります。実際に水分補給や休憩を禁止していなくても、指導者や上級生が勧めなければ禁止であると捉えてしまう可能性もあります。

そのため、熱中症対策は細かすぎるくらいに丁寧に指示をしたほうが良いのです。

人と機械の双方からさらなる安全対策を講じる必要性

熱中症は死亡例や後遺症に苦しむ例があるなど、児童生徒へ大きな影響を与えるものです。児童生徒の熱中症発生で多くを占めるのが『部活動』であることの原因には、基本的に1つの部活動に指導者が1人か2人であること、その指導者も常時見守りができない学校事情が関係していると考えられます。

日本の教職員は世界的に見ても求められるものが多いため、日々多くの業務に奮闘しています。そんな多忙な中で、季節によっては熱中症の対策も求められるのです。しかし、多くの指導者は教員であり医療従事者ではありません。

それらを考慮しつつも児童生徒の安全を守るためには、人の目で補えない部分を機械で補う必要があるのではないでしょうか。機械を使用することで、個々の体調を的確に管理し、体調に変化のある児童生徒の見逃しを防ぎます。

熱中症ウォッチでは、通常の体温計で測れない深部体温の温度上昇で熱中症の危険性を察知し、集中していても気が付くようにアラート機能で体調の変化を知らせ、休憩と水分補給を促します。深部体温に基づいたアラートであるため、アラートが鳴らなくても休憩や水分補給は必要ですが、万が一の際、深部体温の上昇がわかれば的確な対応もとりやすいでしょう。

個々の体温管理などは機械に任せ、指導者は経験や普段の生徒との関わりから判断し、指示をすることで2重の対策となるのではないでしょうか。機械の導入は指導者と児童生徒、その保護者など双方に安心感をもたらすと言えるでしょう。

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熱中対策ウォッチ