同居に伴う高齢者の引っ越しのリスクと自治体サポート下での一人暮らしの限界は

同居が高齢者にとっては思わぬストレスになってしまうことがあります。住み慣れた土地で高齢者が一人暮らしを続けるためには自治体や民間企業のサポートが不可欠ですが、介護度が進むにつれ、安全な暮らしを維持することが難しくなるでしょう。また、高齢化や人手不足のため、各自治体の負担が重くなることも懸念されます。

良かれと思った同居が高齢者のストレスになる理由


就職や結婚などをきっかけに実家を離れたものの、親が高齢になり介護のことを考え、同居に踏み切るケースは少なくありません。しかし「良かれと思った同居」が、高齢者にとってはストレスになってしまうこともあるのです。

環境の変化で引き起こされる「リロケーションダメージ」

住む場所や暮らし方などの生活環境の変化がストレスになり、心身の健康を損ねてしまうことを「リロケーションダメージ」といいます。故郷を離れて慣れない土地で過ごしているときに、ホームシックにかかってしまった経験はありませんか?リロケーションダメージの症状は、ホームシックととても似ています。

同居のための引っ越しで、住み慣れた土地や顔なじみの人たちから離れてしまうことは、高齢者にとって大きなストレスです。また、一緒に生活する家族も変わることから、気を遣う場面も増え、生活リズムも変えざるを得なくなるでしょう。

リロケーションダメージは年齢に関係なく起こり得るものですが、特に高齢者や認知症の方に影響が出やすいといわれています。高齢者は不安や混乱から認知症を発症してしまうこともあり、認知症の方は症状を悪化させてしまう可能性もあるのです。

リロケーションダメージによる高齢者の負担を軽減するには、元気で自由に行動できるうちに引っ越して貰うことが必要になりますが、高齢者自身が引っ越しに前向きであることや精神面に問題がない、家族間に問題がない場合に限るなど制約が多いのも知っておくべきでしょう。

高齢者は同居を望んでいない?

内閣府が全国の60歳以上の男女に対して行った令和元(2019)年度の調査によると、経済的な暮らし向きについて「家計にゆとりがあり、まったく心配なく暮らしている」が20.1%、「家計にあまりゆとりはないが、それほど心配なく暮らしている」が54%と、全体の約4分の3が心配なく暮らしているという結果になっています。

また現在、生きがいを感じているかどうかの調査については、「十分感じている」が37.2%、「多少感じている」が42.5%で、約80%が生きがいを感じているという結果です。さらに「収入のある仕事をしている」のは37.3%で、平成28(2016)年の32.9%より増加しています。

仕事をしている理由は「収入がほしいから」が45.4%、「働くのは体によいから、老化を防ぐから」が23.5%、「仕事そのものが面白いから、自分の知識・能力を生かせるから」が21.9%となっており、働いている60歳以上の人の87%が70歳以上まで働きたいと考えているという結果が出ています。

この調査結果からは生き生きと自活している高齢者の姿が見え、充実している生活環境を変えて同居をすることが必ずしも良いとは言い切れないことがうかがえます。

一人暮らし高齢者(独居老人)の割合と要介護認定

日本の総人口は令和2(2020)年10月1日現在、約1億2,571万人です。そのうち65歳以上人口は約3,619万人で、全体の28.8%を占めています。また、令和47(2065)年には、約2.6人に1人が65歳以上、約3.9人に1人が75歳以上になる見込みです。

65歳以上の一人暮らしの数は、昭和55(1980)年には男性が約19万人で65歳以上人口に占める割合は4.3%、女性が約69万人で11.2%でしたが、平成27(2015)年には男性が約192万人で13.3%、女性が約400万人で21.1%となっており、男女ともに増加傾向にあります。

さらに令和22(2040)年には、男性が約355万人で20.8%、女性が約540万人の24.5%に増加する見込みです。

2040年には65歳以上の一人暮らしは、65歳以上の人口の4分の1から5分の1になるということが予測されています。そうなると自治体はコミュニティによる助け合いでは見守りの目が足りなくなることが予想できるでしょう。

一人暮らしが可能な基準は

日常生活の中でどのくらいの介護や介助を必要とするのかという程度を表すものに、要支援・要介護認定があります。要支援1~2は「部分的な介助は必要だが基本的に一人暮らしができる程度」であり、要介護1~5になると「運動機能だけではなく、思考力の低下も見られる状態」となります。

認定基準については、それぞれの症状が異なるため設けるのが難しく、現在では公表されていません。

令和元(2019)年、厚生労働省が行った国民生活基礎調査によると、要支援・要介護者がいる世帯構造は「核家族世帯」が 40.3%で最も多く、次いで「単独世帯(一人暮らし)」が 28.3%となっています。

一人暮らし世帯のうち、要支援者の世帯の割合は41.4%、要介護者の世帯は55.7%です。介護度別の割合では、要介護1が20.4%、要介護2が16.9%、要介護3が9%、要介護4が5.9%、要介護5が3.5%と、介護度が重くなるにつれ一人暮らし率は低くなっています。

同居の介護者がいる場合の介護時間の調査結果を見ると、要支援1から要介護2までは「必要なときに手をかす程度」が50%以上を占め最も多くなっていますが、要介護3以上では「ほとんど終日」が最も多くなっていることから、一人暮らしの限界は要介護2あたりといえるのかもしれません。

高齢者の幸せはどこで誰に介護されることなのか

平成26(2014)年度の一人暮らし高齢者に関する意識調査(全国の 65 歳以上の一人暮らし男女2,624 人が対象)によると、10点満点とした幸福度の平均値は6.59でした。

また「今のまま一人暮らしでよい」が76.3%、次いで「今後、子と同居したい」が13.4%という結果になっています。

続いて「何らかの介護が必要になった場合、どこで生活したいか」の回答を見ていきましょう。

「日常生活を行う能力がわずかに低下し、何らかの支援が必要な状態」では、「現在の自宅」が66.6%と最も多く、次いで「特別養護老人ホーム等の介護施設」が10.3%、「高齢者向きのケア付き住宅」が9.5%となっています。

「立ち上がるときや歩行が不安定。排泄や入浴などに一部または全介助が必要な状態」では、「特別養護老人ホーム等の介護施設」が29.2%、「現在の自宅」が27.0%、「高齢者向きのケア付き住宅」と答えた者の割合が20.3%です。

「一人で立ち上がったり歩いたりできない。排泄や入浴などに全介助が必要な状態」では、「特別養護老人ホーム等の介護施設」が42.6%と最も高く、次いで「高齢者向きのケア付き住宅」が18.4%、「現在の自宅」が15.5%となっています。

「主たる介護者は誰にお願いしたいか」については、「ヘルパーなどの介護サービスの人」が51.7%と半数以上を占め、次いで「子」の31.4%となっています。

これらの結果を見ると「子」からの介護を望んでいても、「子」の家に引っ越して同居することは望んでいないようです。また、できる限り一人暮らしを続けたい高齢者が多いということは、すなわち自治体のサポートが欠かせないということが見えてきます。

自治体の高齢者サポート例と今後必要な取り組みは


高齢者の一人暮らしが増えている現状で欠かせない自治体のサポートはどんなものがあるのでしょうか。

東京都足立区が行う取り組みには高齢者の一人暮らし住民を孤立させないための「孤立ゼロプロジェクト」があります。

具体的には町会・自治会などの活動の中で、一人暮らし高齢者の孤立を防ぐため、日ごろからの挨拶や声かけ、玄関先での戸別訪問、集会室や会館を活用した高齢者の居場所作りなどを推進しています。

また愛知県瀬戸市では、2020年10月から独居ケアアシスタントを活用したシステムを全国で初めて導入しました。これは高齢者自宅の冷蔵庫の上部に開閉を感知するセンサーを設置して高齢者の活動状況を確認、一定時間開閉がない場合には安否確認を行うものです。

前者は東京都で若い人口も多いことから、長期的な運用は可能と言えます。しかし、町内会や自治体に入らない若者が増えており、それらの仕組みを変えなければ今後人手不足が問題になる可能性があるでしょう。

後者では冷蔵庫の開け閉めで安否確認を行うため、見守り時点で人手があまり必要なく、今後も継続が困難になることはないように感じます。しかしあくまで問題が起きているかをチェックするものなので、高齢者がどんな問題を抱えているかの把握までは難しいでしょう。

この2つの取り組みを併せると、コミュニケーションと安否確認の両方で高齢者を支えられると考えます。コミュニケーションは町内会や自治会に依存せず、家族間やケアスタッフによる電子コミュニケーションを取り入れることで高齢者の精神状態を把握しやすくなるでしょう。

町内会の見守りでは落ち込み気味の高齢者に何が必要か判断がつきにくく、その家族への連絡も難しいため、上手く連携がとれる仕組みが必要です。

一人で生活できるうちは自宅で暮らしたい高齢者が多いことを考えると、高齢化や介護業界の人手不足が進む中では、自治体によるサポートの負担を軽減しつつ長期的に運用できるような策を練ることが急務なのではないでしょうか。

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